第一回サンビスタ意識調査報告

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2025年4月、首都圏を中心に活動するサンビスタを対象に、初めての意識調査を実施しました。
調査の対象は、エスコーラ所属者や有志グループの参加者、健康運動としてダンスに取り組む方、ステージで踊るダンサー、演奏を担うバテリア、さらにはサンバ・コングレスの参加者までと幅広く設定しました。年齢層も、これからサンバを楽しみ始める若い世代から長年シーンを支えてきたベテラン世代まで、まんべんなくカバーしています。

今回は「第1回」として、サンビスタたちの現状を俯瞰的に把握することを目的に行いました。その結果、92名から回答をいただき、現在のサンバ・コミュニティの姿を示す貴重なデータが集まりました。本記事では、その調査概要と結果をご報告します。

アンケート結果

調査回答者のプロフィール

今回の調査には合計90名から回答をいただきました。年代別では、50代が39名と最も多く、40代が23名、20代が12名、60代以上が10名、30代が5名、そして10代が1名という結果でした。幅広い世代からの声が集まり、世代ごとの関わり方の違いを把握できる貴重なデータとなりました。

サンバ歴については「7年以上」が72名と圧倒的に多く、長年シーンを支えてきたベテラン層が中心であることが浮き彫りになりました。一方で、1〜3年が8名、4〜6年が6名、1年未満も4名と、少数ながら新しい層も確実に存在しており、次世代の広がりを感じさせます。

性別では、女性が75名、男性が15名と女性の割合が非常に高いことがわかりました。これは、サンバが持つダンスや表現の魅力、健康やコミュニティ活動としての側面が、特に女性層に強く支持されていることを示していると考えられます。逆に言えば、男性の参加をいかに促すかも、今後のコミュニティの発展において一つの課題といえるでしょう。

チーム所属と活動パート

回答者のうち、サンバチームに所属している人は69名、所属していない人は21名でした。大多数がエスコーラや地域グループに属して活動している一方で、所属せずに個人や有志で楽しんでいる人も一定数存在していることがわかります。サンバとの関わり方が多様化している現状を映し出す結果といえるでしょう。

活動パートをみると、パシスタ(34名)が最も多く、次いでバテリア(16名)、アーラ(6名)、その他(12名)という構成でした。華やかな表現を担うダンサー層が厚い一方で、リズムを支えるバテリアや行列を彩るアーラなど、多彩な役割がバランスよく存在しています。

また、複数の役割を兼ねて活動している人も21名いました。その内訳を見ると「ダンサーとして複数の役割を持つ」が11名、「ダンサーとバテリアを兼ねる」が10名であり、ダンスを軸にしながら演奏にも関わるなど、柔軟に活動する人が一定数いることが明らかになりました。これは日本のサンバ・コミュニティにおいて、人材の多才さや役割の広がりを示す興味深い特徴といえます。

活動状況:出演イベントと有料出演経験

昨年の出演イベント数を見ると、最も多かったのは「10回」で21名。続いて「5回」が10名、「3回」が15名など、年間を通じて複数回出演している人が多いことがわかります。一方で、「50回」「70回」「80回」といった非常に高頻度で出演している人もおり、まさに生活の一部としてサンバ活動をしている姿が浮かび上がりました。全体的には、月に数回から年間10回前後の活動が中心ですが、一部のコアメンバーは年間数十回以上という突出した活動量を誇っています。

また、有料イベントへの出演経験については「はい」が73名、「いいえ」が17名となり、8割以上が有料出演を経験している結果となりました。これは、日本のサンバ・コミュニティにおいて、趣味や練習にとどまらず、実際に舞台やイベントで「パフォーマー」として活動する人が多数派であることを示しています。特に、女性が多く参加しているという性別分布の特徴と重ね合わせると、「ダンスや演奏を通じて表現し、その価値を社会に届ける」という側面が強く現れているといえるでしょう。

サンバにかける費用

月々のサンバ関連費用については、「〜5,000円」が最も多く39名、次いで「〜10,000円」が21名、「〜20,000円」が16名となりました。全体としては1万円未満で活動している人が6割を占めており、日常生活の中で無理なく続けられる範囲で楽しんでいる人が多いことがわかります。

一方で「20,000円以上」と答えた人も6名おり、衣装やレッスン、遠征など積極的な活動に投資している層も一定数存在します。最も少ない「0円」と回答した8名は、所属チームがなく自主的に踊っている人や、ほとんど費用をかけずに参加している人と考えられ、サンバの楽しみ方の幅広さを示す結果となりました。

この結果からは、日本のサンバ・コミュニティが「気軽に参加できる文化」でありつつも、「本格的に取り組み投資を惜しまない層」まで多様な形で成り立っていることが見て取れます。

サンバを生計にしたいかどうか

サンバ活動を「生計」に結びつけたいかについては、「はい」と答えた人が4名、「一部収入源にしたい」と答えた人が23名となり、全体の約3割がサンバを収入に結びつけたい意向を示しました。一方で、「いいえ」が63名と多数を占め、活動をあくまで趣味やライフワークとして楽しみたいと考える人が多いことも明らかになりました。

この結果からは、日本のサンバ・コミュニティが基本的には「楽しみ」としての側面が強い一方で、一定数の人がプロフェッショナルとしての道を模索していることがわかります。とりわけ「一部収入源にしたい」と回答した人の割合が高いのは、完全に職業化するよりも「副業的」「ライフスタイル的」にサンバを取り入れる姿勢が一般的であることを示しているといえるでしょう。

普及方法の傾向

最も多かったのは SNS(67件) で、やはり日常的な情報発信・拡散力への期待が圧倒的に高いことがわかります。次いで 体験レッスン(47件) が多く、「実際に体験することが普及の鍵」という意識が強く共有されていることが見て取れます。

さらに テレビやメディアでの露出(39件)YouTube(30件) といった映像媒体も重視されており、サンバの魅力を視覚的に伝えることが重要と考えられています。

一方で 企業イベント(31件)学校導入(27件) など、社会的な場や教育現場とのつながりを通じた普及方法も一定の支持を得ており、サンバが地域や社会に根付いていく可能性を示す結果となりました。

サンバの魅力・伝えたいこと(自由回答より)

1. 楽しさと開放感

  • とにかく楽しい!
  • 音に合わせて身体を動かすだけで気分が上がる
  • 気分が落ち込んでいても笑顔になれる
  • 年齢や性別を問わず、誰でも楽しめる
  • 「今ここ」に集中でき、ネガティブな感情を忘れられる
  • 魂の解放、心の底から元気になれる

2. 音楽とリズムの魅力

  • 生音で踊る高揚感・迫力
  • リズムが決まった時の一体感とトランス感
  • 打楽器の爽快感、グルーヴの素晴らしさ
  • 音楽としての深みや、ブラジル音楽全体の奥深さ

3. 多様なスタイルと文化的広がり

  • 羽根を付けたパシスタだけではなく、多様な踊りや役割がある
  • ダンサーだけでなくバテリアやアーラなど多様な参加の仕方ができる
  • 衣装も露出度を抑えたスタイルが可能で、誰でも参加しやすい
  • サンバは総合芸術であり、明るさだけでなく深みや仄暗さも表現できる
  • 異文化交流やコミュニティの広がりも大きな魅力

4. 人生や日常への影響

  • 人生を豊かにし、生きる力になる
  • 仲間が増え、人間関係が広がる
  • 心と体がリラックスし、健康効果も感じられる
  • 生き方や視野の広がりにつながる

5. 伝えたいビジョン

  • サンバの偏ったイメージを変えたい(露出や激しさだけではない)
  • 初心者も気軽に始められる文化であることを知ってほしい
  • カーニバルやチームの背景を伝えることで理解が深まる
  • 常にアップデートされた情報を共有し、新しいサンバの魅力を広めていきたい

自由回答からは、圧倒的に多かったのは「楽しい!」という声でした。サンバは単なるダンスや音楽ではなく、人を元気にし、人生を豊かにする文化的体験であることが多くの人の共通認識になっているのが印象的です。また、「羽根のお姉さん」のイメージだけでなく、多様な楽しみ方があることを伝えたいという声も強く挙がっています。

まとめ

今回の調査は、対象者に偏りがあるため「最初の段階での実態把握」にとどまるものではありますが、サンバ・コミュニティの現状を多角的に示唆する結果となりました。今後は課題を設定し、対象を絞って深堀りすることで、サンバやアフロブラジル文化をより広く普及させるための調査を続けていきたいと考えています。

結果からは、「一部収入源にしたい」という希望が多い一方で、衣装や活動費などの支出が収入を上回る現状も浮き彫りになりました。また、イベント出演の回数には大きな個人差があり、その背景にコネクション、スキル、チーム所属の有無といった要素が影響している可能性も見えてきました。出演回数と収入との関係性を探ることも、今後の興味深いテーマとなるでしょう。

いずれにしても、サンバを広めていく上で有効と考えられているのは、オンラインでの拡散(SNS・YouTube) と リアルな場での体験(体験レッスン・イベント参加) の両輪であることが明らかになりました。今回得られた知見を基盤に、次のステップとしてさらなる調査と実践を重ね、日本におけるサンバとアフロブラジル文化の普及につなげていきたいと思います。

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